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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1388号 判決 1949年 3月 05日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人衣川雅男辯護人是川禮介上告趣意第二點について。

原判決が被告人衣川雅男に對する判示第二の事実を認定するのに被害者小室ツルに對する司法警察官の聽取書中の同人の供述記載を證據としたこと及び原審第三回公判廷において、同被告人の辯護人是川禮介より右小室ツルを證人として喚問されたいとの申請がなされたのにかかわらず、原審がこれを却下したことは所論のとおりである。併し原審は其の後共同被告人石田秀夫の辯護人からの申請を採用し、同第五回公判期日に前記小室ツルを證人として公判廷に喚問したことは論旨も自認するところであるのみならず、同第五回公判調書を精査すると、同證人に對しては被告人衣川雅男に對する身分關係についても舊刑事訴訟法第一九五條第一項所定の問査がなされたものと認められるし、その訊問内容も、各共同被告人に對する公訴事実に關係しているから、同證人は、被告人石田秀夫のみならず他の共同被告人全員に對する公訴事実に關して、證人として喚問されたものであることが明かであり、然かも同公判期日には被告人衣川雅男及び辯護人是川禮介も出頭し、同證人の訊問に立會って居り、右訊問終了に際しては被告人等は裁判長から、同證人に對し訊問することがあるかどうかを問はれたのに對し、各被告人はいづれも無之旨答えていることがわかる。

以上のような次第であるから、原審は被告人衣川雅男の辯護人よりの所論の申請を一應は却下したけれども、結局、公判期日において同證人に對する訊問の機會を被告人衣川雅男に與えたのであるから、同證人の供述を録取した所論の聽取書を前記判示事実認定の證據としても、何ら刑訴應急措置法第一二條第一項に違反するものではない。從って論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する)

以上の理由により刑事訴訟法施行法第二條舊刑事訴訟法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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